日本のメディアのインタビューに応じた、ジョンボルトンは「私はアメリカニゼーション(アメリカ化、アメリカの価値観や文化、企業が世界に大きな影響を与えること)を信じている」と語った。確かにアメリカニゼーションはアメリカ人にとっては「マニフェストディスティニー(西部開拓を正当化するために使われた標語)」なのかもしれないが、他の国に住む人にとってはもはや笑いのネタでしかない。
少なくとも9.11の後、アメリカを多くの国は信用していた。実際、反米志向の強いフランスのメディアも「素晴らしい友人に対する攻撃」とこのテロ事件を非難した。しかしイラク侵攻に代表されるブッシュの外交的無関心、リビアやシリア、同盟国に対するスパイ活動で同盟国との関係にヒビが入ることになったオバマの外交的失敗、そして同盟国を敵認定するトランプの外交的破綻によりもはやアメリカを信用できると主張する政治家を探すことは先進国でも途上国でも困難になりつつある。
結局のところアメリカニゼーションを支えていたのはアメリカが良くも悪くも必要だったからだ。それは冷戦だったり途上国の貧困だったりしたが、これらの問題は皮肉なことにアメリカがソ連を打ち負かしたことで解決した。アメリカに敵はいなくなったが、同盟国にとってはアメリカと連携する旨味も消えることになった。またアジア諸国の発展は経済的交流を加速させた。最も勢いに乗った国はおそらく中国であり、軍備増強は少なくともインド、オーストラリア、日本の政府に不信感を持たせることになった。しかし親米的で反共的な保守派の政治家でさえ経済関係を切るということには乗り気ではないようで、少なくとも貿易の拡大、中国の内需拡大は全ての業種においてプラスの影響を与えてきた。
それに加えてアメリカの恣意的な外交スタイルをもはや隠すことはできない。アメリカはミャンマーのクーデターを非難したが、エジプトやタイのクーデターには弱腰だった。中国やロシアの人権問題を批判する一方、国内の人権問題はないがしろにされてきた。少なくともウイグルの問題で中国を批判した一方、BLMのデモ隊を軍で封じ込めることを容認したトランプ政権はその問題を明確化したと言わざるを得ない。
結局のところアメリカニゼーションは各国にとって利益があったため、あるいは他に選択肢がなかったため受け入れられてきたのだ。だが、途上国や新興国の自立もあり、少なくともアメリカニゼーションを推し進める動きは弱まりつつあるように感じる。アメリカは今後も大国であり続けるだろう。だが、アメリカニゼーションは終わる。むしろアジアの成長により企業や人材がアジアに吸い寄せられるアジアニゼーションが進展するだろう。これはアジア域内での相互交流の活性化と欧米諸国におけるアジアに対する関心の高まりという要素で構成されるものである。
AIIB、RCEP、中国EU投資協定。これらはアメリカニゼーションの終わりとアジアニゼーションの始まりを示している。我々がいるのはもはや新時代である。いや、厳密に言えば、かつて繁栄を謳歌したアジアの再興かもしれない。どちらにせよ、アジアニゼーションはアジア人にとって「マニフェストディスティニー」であると言うことは揺るがない真実であるのだ