草野翔の経済コラムPart3 帝国の発明

中国はアメリカのような超大国になることはないが、影響力は強まる。少なくとも特定の分野において、中国は新たなものを生み出すことで自らの支配を確立するだろう。こと

 中国が世界を支配する、あるいは中国は崩壊寸前である、どちらも欧米の「専門家」がしばしば口にすることだがどちらも正しくはない。アメリカが衰退しつつあるのは間違いないが、それは中国の追い上げによる相対的な地位低下が大きい。ましてや中国だけが急成長しているわけではない。インドやベトナムの台頭がそれを象徴している。そして日本やドイツ、イギリスの経済規模は縮小するだろうが、完全に力を失うことはないだろう。それでも中国はある程度の大国として世界に大きな影響をもたらすことになるだろう。

 ところで、覇権国は時代の変化とともに変わってきた。そして覇権国は常に新しいものを発明してきた。スペインは中南米との貿易で金を大量輸入した。オランダは中継貿易と株式会社の設立で大成功した。イギリスは産業革命と植民地経営で繁栄を謳歌した。アメリカは金融システムやインターネット、物流の支配や共通の価値観を持つ同盟国との連携、アメリカに本部を構える国際機関の設立により超大国となった。

中国はどのようなものを発明するのだろうか。もちろん、デジタル人民元もその1つであるのは間違いないが、興味深いのはイデオロギーではなく経済的な結びつきに重点をおいていることだ。もちろん台湾や香港を巡ってはイデオロギーを重視しているように思えるかもしれないが、中国は対外関係においてはイデオロギーを重視して来なかった。むしろ経済的交流を何より優先してきたため、中国は今のような大国になったのだ。そして興味深いのは中国は二国間での交渉を重視しており、相手国の内政に無関心を貫くことだろう。アメリカと比べれば冷酷ではあるかもしれないが介入を避けてきた。それも究極の経済至上主義という中国が発明したものの1つである。

 と言っても中国の支配はかつてのアメリカのものとは大きく異なる。それは唯一の超大国ではないということだ。実際のところ中国はいくつかの分野においてアメリカの支配を終わらせることになるだろうが、アメリカという国もしぶとく生き残るだろう。アメリカは表現の自由や人権外交を少なくとも表向きには続けるだろう。それは中国には真似できないことである。

 このような時代において日本はどう生き抜くべきなのか。おそらくアメリカや中国

、どちらかを支持するべきではない。良心的な中立国としてのスタンスを追求すべきであり、EUはこれについて先行している。EU加盟国の大半はアメリカの同盟国だが、EUと中国は投資協定締結で合意した。このような絶妙な綱渡りが今後の時代では鍵になるということを前提において外交に向き合わなければ日本は地獄のような状況に直面するだろう。

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 中国が世界を支配する、あるいは中国は崩壊寸前である、どちらも欧米の「専門家」がしばしば口にすることだがどちらも正しくはない。アメリカが衰退しつつあるのは間違いないが、それは中国の追い上げによる相対的な地位低下が大きい。ましてや中国だけが急成長しているわけではない。インドやベトナムの台頭がそれを象徴している。そして日本やドイツ、イギリスの経済規模は縮小するだろうが、完全に力を失うことはないだろう。それでも中国はある程度の大国として世界に大きな影響をもたらすことになるだろう。

 ところで、覇権国は時代の変化とともに変わってきた。そして覇権国は常に新しいものを発明してきた。スペインは中南米との貿易で金を大量輸入した。オランダは中継貿易と株式会社の設立で大成功した。イギリスは産業革命と植民地経営で繁栄を謳歌した。アメリカは金融システムやインターネット、物流の支配や共通の価値観を持つ同盟国との連携、アメリカに本部を構える国際機関の設立により超大国となった。

中国はどのようなものを発明するのだろうか。もちろん、デジタル人民元もその1つであるのは間違いないが、興味深いのはイデオロギーではなく経済的な結びつきに重点をおいていることだ。もちろん台湾や香港を巡ってはイデオロギーを重視しているように思えるかもしれないが、中国は対外関係においてはイデオロギーを重視して来なかった。むしろ経済的交流を何より優先してきたため、中国は今のような大国になったのだ。そして興味深いのは中国は二国間での交渉を重視しており、相手国の内政に無関心を貫くことだろう。アメリカと比べれば冷酷ではあるかもしれないが介入を避けてきた。それも究極の経済至上主義という中国が発明したものの1つである。

 と言っても中国の支配はかつてのアメリカのものとは大きく異なる。それは唯一の超大国ではないということだ。実際のところ中国はいくつかの分野においてアメリカの支配を終わらせることになるだろうが、アメリカという国もしぶとく生き残るだろう。アメリカは表現の自由や人権外交を少なくとも表向きには続けるだろう。それは中国には真似できないことである。

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、どちらかを支持するべきではない。良心的な中立国としてのスタンスを追求すべきであり、EUはこれについて先行している。EU加盟国の大半はアメリカの同盟国だが、EUと中国は投資協定締結で合意した。このような絶妙な綱渡りが今後の時代では鍵になるということを前提において外交に向き合わなければ日本は地獄のような状況に直面するだろう。

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